社団法人化にあたって |
1998年(平成9年)12月、日本を代表的する半導体企業10社と東京大学/明星大学により電子実装工学研究所が発足してから早くも19年の歳月が経ちました。
この間、電子実装工学研究所は、実装技術のための日本初の産学連携コンソーシアムとして、ポリマー実装に関する国際会議、低温接合と3次元集積化に関する国際会議など通算5回の国際会議開催を通じた情報の発信、1998-2005年の東京大学への実装工学寄付研究部門の設置を始めとした実装技術の工学的な体系化の活動、約40回にわたる公開研究会、本分野の海外著名研究者の招聘、招待講演会の開催などを行い、日本の実装分野の課題であった、①世界のスタンダードとなりうる技術の発信、②実装技術の工学的な体系化、③この分野を担う技術者・研究者層の育成、を鋭意推進し、これらの活動を通じて次世代の実装技術のモデルを描くことに努めてまいりました。
また、実装分野で先端的な研究成果を生み出すため、設立当初よりワーキンググループWG1(高速伝送)およびWG2(常温接合)を運営し、通算300回以上の研究会を開催するとともに、2015年には、昨今重要な分野となっているパワーエレクトロニクスに関するワーキンググループWG3(パワーモジュール)を新設しています。WG1では、超高速信号伝送・超小型実用化システムの統合設計技術を確立し、WG2では、バンプレスインターコネクトなどの次世代接続技術の開発、半導体デバイスのみならず、光デバイスやエネルギーデバイスの製造のための常温技術の実現と普及を行ってまいりました。また、WG3では、2016年から米国実装関連学会のIEEE-ECTCでパワエレ分野の特別セッションを担当し、日本、欧州、米国のパワエレ実装分野の未来を議論するリーダ役としての役割を果たすに至っています。また大学会員として新たに早稲田大学を加え、産学連携体制をさらに強化しています。
2016年はIndustory4.0やIoTに代表される第4次産業革命が世界各地で勃興する元年であり、実装技術分野においても3Dプリンティングを始めとした製造技術の革新や材料・部品・モジュールのスマート化が進み、電子実装工学研究所が目指す実装技術は、従来以上に、社会システムの基盤形成のための技術の重要な一角を占めるものと予想されます。
このような中、設立当初の趣旨をさらに発展させ、日本発の最先端実装技術創出に貢献すべく当研究所を社団法人化するに至りました。この社団法人化を契機に、我が国のエレクトロニクス産業界がさらに一体となって世界のスタンダードとなりうる実装技術を発信するとともに、欧米の代表的な研究機関との連携をも図りながら、日本の実装技術分野が真にグローバルに発展するように貢献していきたいと考えております。この目的の実現のため、産官学の連携を従来以上に積極的に推進し、重要な特定のテーマについては各WGの強化はもちろんのこと、WGの枠を超えた新たな研究の推進をも図ります。
各界の皆様には、上記趣旨をご理解、ご賛同いただき、本研究所への継続的な支援と積極的な参加をお願い申し上げる次第でございます。
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平成28年6月
電子実装工学研究所 一同 |
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設立趣意書 |
わが国のエレクトロニクス産業の優位性の1つが高密度実装技術にあったことは疑い入れません。実際、日本のエレクトロニクス産業は、表面実装技術SMTを標準技術として世界をリードし世界に冠たるエレクトロニクス製品群を生み出してきました。しかしなが従来の技術にのみ依存した製品は競争力を失いつつあり、また、わが国が拠りどころとしてきた高密度実装技術そのものも諸外国の追い上げが著しく、もはや技術的標準のない軽薄短小だけの目標では、新たな世界スタンダードとなる技術の発信は難しい状況に到っています。しかも今や半導体技術にはコストと技術の壁が迫っており、システム機能を最大限に引き出す実装技術がシステムの差別化と低コスト化を実現する鍵となり始めています。
一方、現在のエレクトロニクス産業が次々と生み出しているものは多くの場合極めてライフサイクルの短い商品群であります。来るべき21世紀の循環型社会に貢献するためにはエレクトロニクス産業における製造のありかた自体にも変革が求められており、廃棄/リサイクルの困難な基板材料や接合材料を多用する実装技術は最も変わるべき、そしてその効果も最も期待できるエレクトロニクスの中核的技術であるといえます。しかしながら以上のような次世代の実装技術を考えるとき、世界のスタンダードとなりうる技術の発信という点では、わが国はこれを官民を挙げて推進している欧米に遅れをとりつつあるといわざるをえません。しかも、実装技術の工学的な体系化は全く遅れており、また個々の企業においてすらその統合化が進展していないため、この分野を担う技術者・研究者層自体が育っていないのが現状です。これが個々の要素技術としてのレベルは世界に誇るべきものでありながら、次世代の実装技術のモデルを描き出せない原因となっているとも考えられます。
このたび私たちは、これまでのわが国の実装技術の集積を基礎としてその工学的体系化を図るとともに、21世紀の循環型社会におけるエレクトロニクス産業に適合した実装技術のあるべき雛形を具体的に提示するために、電子実装工学研究所を設置することと致しました。本研究所では、エレクトロニクス産業界が一体となって世界のスタンダードとなりうる実装技術を発信することによって、日本のエレクトロニクス産業に貢献することを目的としております。またこの目的の実現のため産官学の連携を積極的に推進し、特定のテーマについてはコンソーシアムを結成して研究の推進を図ります。
各界の皆様には、上記趣旨をご理解、ご賛同いただき、本研究所への積極的な参加をお願い申し上げる次第でございます。
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平成9年12月
電子実装工学研究所 発起人一同 |
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発起人 |
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香山 晋 |
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(株)東芝 |
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取締役半導体事業本部副本部長 |
番條 敏信 |
三菱電機(株) |
半導体基盤技術統括部長 |
加藤 弘毅 |
松下電子工業(株) |
専務取締役半導体事業本部本部長 |
上村 正二 |
日本電気(株) |
本社支配人 |
白井 一成 |
富士通(株) |
常務取締役LSI製造事業本部長 |
伊野 昌義 |
沖電気工業(株) |
取締役超LSI研究開発センター長 |
吉田 章 |
三洋電機(株) |
取締役半導体事業本部副本部長 |
米田 照正 |
シャープ(株) |
取締役IC天理開発本部長 |
蓑宮 武夫 |
ソニー(株) |
生産技術研究所長 |
石橋 正 |
(株)日立製作所 |
常務取締役半導体事業部長 |
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